薬局で「残薬がある」と判断されたとき、処方日数を減らすなどの調整を行うことで算定できる「調剤時残薬調整加算」が、2026年6月1日から制度として新設されました。旧制度の「重複投薬・相互作用等防止加算」の残薬調整部分がこの「調剤時残薬調整加算」に改組されたことにより、要件・点数・処方箋様式・レセプト記載等、運用が一新されています。この記事ではこの「調剤時残薬調整加算とはいつから」を中心に、その算定要件や具体的な手順、薬剤師としての実務的注意点を専門的に解説します。
調剤時残薬調整加算とはいつから
調剤時残薬調整加算は令和8年度診療報酬改定における新制度の一つであり、旧来の加算が廃止されたうえで新設されました。具体的には、2026年(令和8年)6月1日から適用が開始されます。これまでの「重複投薬・相互作用等防止加算」の残薬調整を含む部分が整理され、より明確な要件と点数区分が設けられました。処方箋の様式にも「残薬確認時の指示」欄が追加され、医師と薬局の連携がより制度化されています。
制度発足の背景
高齢化の進展や薬の多剤併用がもたらす副作用リスクの増加、残薬の無駄や事故の発生が社会的な課題となっていました。その中で、残薬を確認し処方を減らすことによる医療の効率化と安全性の向上が重視され、従来の加算制度が改訂されて新制度が導入されることになりました。薬剤師の専門性がより活かされるよう、要件や点数が見直されています。
施行日・開始時期
この加算が正式に始まるのは2026年6月1日です。その日から診療報酬上、処方箋の交付前に医師の指示や薬剤師による残薬確認および処方日数減を実際に行った場合には、新しい「調剤時残薬調整加算」が算定対象となります。6月1日以降、薬局での運用準備が必要です。
旧制度との違い
以前は「重複投薬・相互作用等防止加算」に残薬調整分が含まれており、残薬調整以外の処方変更も同加算でまとめていました。新制度では残薬対策の「調剤時残薬調整加算」と薬学的安全性に関する「薬学的有害事象等防止加算」に完全に分かれ、残薬調整に限定した要件や手順が明文化されました。また、点数も最低30点から最高50点となり、状況に応じて区分されるようになりました。
調剤時残薬調整加算の算定要件
調剤時残薬調整加算を算定するためには、定められた算定要件を一つ一つ満たす必要があります。どのような患者が対象となるか、何をしたら算定できるのか、その基準が細かく定義されています。ここでは加算の対象・点数区分・「7日分以上相当」とは何か・6日以下の場合の例外などを詳しく解説します。
対象患者と基本要件
対象となるのは調剤管理料を算定する患者で、患者本人またはその家族等から服用予定の医薬品に残薬があると確認できた患者です。そのうえで、処方医の指示または医師への照会を経て、残薬を調整する目的で処方日数を変更することが要件となります。変更があったことが、加算算定の基本的な前提です。
点数区分と算定条件
この加算には4つの区分があり、それぞれ点数が異なります。
- イ:50点 在宅患者で、処方箋交付前に薬局が医師に提案しそれが処方に反映された場合
- ロ:50点 在宅患者で処方日数を変更した場合(イ以外)
- ハ:50点 かかりつけ薬剤師が変更した場合(イ・ロ以外)
- ニ:30点 その他一般外来などのケース
異なるシチュエーションによって薬局・薬剤師の役割と勤務形態が評価されます。
「7日分以上相当」の基準
原則として処方日数を減らす量の基準が設けられており、内服薬では7日以上、頓服薬では7回以上、外用薬では使用量および使用頻度や回数に応じて7回分以上相当とされています。この「7日分以上」であることが新制度の中心的な基準であり、実務上も判断が必要なポイントです。
例外規定:6日分以下でも算定可能な場合
原則は7日分以上相当の処方日数変更ですが、薬剤師が薬学的専門性から必要と判断した場合には6日分以下相当でも算定できます。ただし、その場合には「医薬品名と理由」を調剤報酬明細書(レセプト)の摘要欄に記載することが必須です。高額薬の服用負担軽減や副作用リスクへの対応、認知機能の低下などが例示されています。
具体的な手順と薬局・薬剤師の対応
制度が始まっただけでは加算を算定できる訳ではなく、薬局・薬剤師には具体的な対応が求められます。残薬の確認方法、医師との連携方法、処方箋様式やレセプトへの記載、記録の保存など、実務上押さえておくべきフローを解説します。
残薬の確認と聞き取り
まずは患者本人または家族から残薬の存在や量を聞き取ります。飲み残しの薬や飲み忘れた薬があるか、薬剤の種類・数量を具体的に確認します。薬剤服用歴・お薬手帳等の記録を用いて確認の精度を上げることが望まれます。この聞き取りがあって初めて残薬調整の必要性が明確となります。
医師との疑義照会・提案
残薬の確認後、処方医へ照会を行い、残薬調整の提案を行います。医師の指示が処方箋に反映されることが加算算定の条件です。処方内容の変更、処方日数の減少などの結果が必要です。処方箋様式には「残薬確認時の指示」の欄が設けられており、これをもとに医師側の指示経緯を明示することが求められます。
処方箋様式とチェック欄の利用
2026年改定で処方箋様式に「残薬確認時の指示」欄が追加されています。具体的には、医師が「残薬を確認し、減量または疑義照会 → 処方内容を変更した」「保険医療機関に情報提供した」などのチェックを行う欄が設置されており、このチェック欄の記録および残薬調整の事実が重要な証拠となります。
レセプト明細書への記載と薬歴記録
7日分以上の処方日数変更では通常の要件があれば良いのですが、6日分以下相当の場合には必ずレセプト摘要欄へ「変更を行った理由」と「医薬品名」を記載する必要があります。また薬歴には患者からの聞き取り内容・照会内容・指示および変更内容を詳細に記録しておくことが制度運用上非常に重要です。
実務上の注意点とケーススタディ
この制度を薬局で運用する際には、想定される問題点や疑問がいくつかあります。特に算定漏れを防ぐためのチェックポイント、判定が難しい外用薬の取り扱い、在宅患者の場合の対応などを具体的なケースを交えて解説します。
外用薬や頓服薬の扱い
外用薬は使用頻度や部位・量によって「7回分以上相当」に該当するかどうか判断が難しいケースがあります。頓服薬も7回以上が目安ですが、「使われる頻度」により回数の見積もりが変わることがあります。これらは薬剤師の専門的判断と記録が重要になります。
在宅患者やかかりつけ薬剤師の関与による区分
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者、かかりつけ薬剤師制度に登録されている薬剤師が対応したケースなどでは、加算点数が50点になる区分が適用されます。外来患者で薬局に来局するケースでは「ニ」区分で30点となることが多いため、患者属性と薬局・薬剤師の体制を運用前に整備しておくことが望まれます。
処方削除・薬剤がゼロになる場合の取扱い
残薬調整の結果としてその薬が処方から削除される場合でも、処方日数を変更したという実績があれば加算算定できる場合があります。しかし薬剤が全部なくなる場合は処方そのものの変更として扱われるため、処方箋や照会内容・医薬品名の明示などが重要になります。
事務チェックと適切な算定漏れ防止策
薬局事務や薬剤師は算定要件のすべてが整っているかを確認するチェックリストを持つことが有効です。処方箋様式のチェック欄・聞き取り記録・照会文書・レセプト摘要欄記載・薬歴記録などが揃っていないと返戻やレセプト審査で不合格となる可能性があります。運用マニュアルやプロトコルの整備が推奨されます。
まとめ
調剤時残薬調整加算とは、残薬が確認された患者において処方日数を変更することで算定できる制度であり、旧制度から要件が整理されて2026年6月1日から施行されています。算定には残薬の聞き取りと医師との照会、処方内容の変更が必須であり、「7日分以上相当」が基本ですが、薬剤師の判断で6日以下でも例外として算定可能です。
外用薬や在宅患者、かかりつけ薬剤師の関与など、区分によって点数が大きく異なるため、薬局内での体制整備と運用ルールの明確化が求められます。処方箋様式とレセプト記載、薬歴の保存など実務的な記録管理も欠かせません。制度の目的は残薬を減らすことだけでなく、安全で無駄のない服薬管理を実現することにあります。
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